FM三重『ウィークエンドカフェ』2015年11月7日放送

今回のゲストは尾鷲市九鬼町の区長・田崎祐一さんと、地域おこし協力隊として九鬼の町を盛り上げている豊田宙也さんです。
豊田さんが九鬼で生活を始めてから1年。
5月には念願だった食堂 網干場がオープンしました。
九鬼のお母さんたちがボランティアでおいしいお料理を作ってくれています。
人気メニューは新鮮な魚を使ったフライ定食。
水曜日から金曜日の朝10時からお昼の3時までは喫茶店として、町の人たちが集まります。

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リ漁で栄えた九鬼の町

田崎 今、昔を思い出して数えてみますと、小さな商店が40軒以上あったと思います。
料亭が4〜5軒あったんですよ。
他にも、なにわとかラッキーとか、シルバーとか狸御殿とかね。
映画館も邦画と洋画の2軒あったんです。
パチンコ屋も2軒あり、ビリヤード場もありました。
やはり、ブリ漁のおかげですね。

 

豊田 最初はもう、静かな入江の、穏やかな隠れ里のような街だと思っていました。
以前呼んでいただいた時も、そんなイメージしかなかったんですけど、1年たって田崎さんをはじめみなさんの話を聞くと、昔はとんでもない町だったんだなと。
音楽のイベントが有った時もビールのおごり合いがスタートしたりと、きっぷが良いです。
とりあえずお金を出しておいて、お前飲むか?みたいな。
お金を出してから飲む人を探しているような感じで、面白いです。
粋ですね。

 

田崎 昔はもっとすごかったと思いますよ。
一回履いたパンツは、もう二度と穿かないとか。特に漁師がそうでしたね。
使い捨て。
それくらい景気が良かったんですね。

 

豊田 こういう話を聞いているだけでも楽しいです。
本当に、おかしな話とか伝説が尽きないくらいで、これからまだまだおもしろいだろうなと思っています。
区長さんの話は男性中心ですが、お母さんの話も面白いですよ。
やっぱり派手な話が多いですね。
だいたいみなさん、東京に服を買いに行っていたとか。

 

田崎 そして九鬼町には、移動販売が来ていたんですよ。
ほとんどここで完売したとか。
それを元手に尾鷲で商売を始めたとかいう話、いくらでもありますよ。

 

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鬼の正月のまつり

田崎 まつりの時に、ここが拠点になっているんです。
今まで町内は一番組から四番組まで4つに分かれていたのを、この『網干場』に集約しました。
ここはブリどころなので、行われるまつりは『ブリまつり』。
1月3日に弓を引いて、的に当てるという行事。
それからここ『網干場』に集まって、宴会。

 

豊田 お正月なので帰ってくる人たちがいるんですよ。

 

田崎 まつりの行列に加わったりね。

 

豊田 ちょうど『網干場』の前を、神楽を先頭とした行列が歩いて行くので。
「きたきた」と言って、みんな出てくる。

 

田崎 でも正月っていうのは、みんな家で休みたいんですよね。
家でこたつかなんかに入って、テレビを見て。
ですから出てもらうのが、これまた大変なんです。
昔は8日までやっていて、最後の日に『本祭り』があったんです。
それを集約して、今は3日にしているんですけど。
漁がある所は神様や祭り事を大切にしますからね。

 

豊田 僕もお正月はこたつに入ってボーっとする20数年間だったのですが、こっちにきて初めての正月は31日の夜から年明け3日まで、ずっと飲み続け。
誰かに会うと「飲め!」と言われるので、「ありがとうございます」と。
でも、今までで一番楽しい年越しでしたね(笑)

 

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敷漁がもうすぐはじまる

田崎 そろそろ大敷網漁も始まるので準備しているところです。
もう来月には網を入れて漁を始めます。
今の時期だとカマスやイサギ、12月くらいになると、ぼちぼちブリが出始めます。
去年はとても大漁で、株式会社になってから最高の、およそ5万3千匹でした。
水揚げも最高の3億5千万。
大漁の日は、市場を見ると全然違います。
みんなニコニコしている。
活気があります。

 

豊田 どういうルートかわかりませんが、水揚げが始まる前に知っているんですよ。今日は大漁だと。
船から誰かが連絡しているんでしょうね。
大漁だと、忙しすぎて『網干場』には来ません。
定置網に人は、ぱーっといなくなって、ぱーっと帰ってくる。
そういう動きも見えるので面白いですね。

 

田崎 今年も今のところは海況速報でも去年とあまり変わらないということなので、期待できると思います。
大切なのは水温で、ブリが回遊できる14℃〜15℃を目指して来るようですね。
鰹は潮目ですけどね。
沖に漁をするための網を仕掛けるのですが、それは毎年同じ場所です。
昔の人がどうやって調べたのかわかりませんが、魚道というのがあるのでね。

 

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鬼の食堂『網干場』

豊田 僕が九鬼で生活を始めてから1年たち、5月には念願だった食堂『網干場』がオープンしました。
刺身、照り焼き、しゃぶしゃぶ。九鬼で揚がった新鮮なブリは、どの調理法でもおいしく食べることができますよ。

田崎 私のオススメは、ブリの頭をさばいて、さっとお塩でゆがき、ポン酢で食べること。
また、郷土料理のべっこう寿司は、わさびの代わりに洋からしを使います。

豊田 網干場ができてから、町の人同士も以前より交流する時間が多くなりました。
ここで最近ではライブも行われているんですよ。

 

代を越えて人と人とが付き合える町

豊田 僕の友だちが東京からやってくると町のみんなが遊んでくれるので、うれしいですね。
みんな同世代というか友だちのように遊んでくれたり、まつりや面白いところに連れて行ってくれたり・・・。

 

田崎 この人はマスコミとかに取り上げられてもサマになるんだよね。
昨日も中日新聞に乗っていましたけど、カッコいいんですよ。

 

豊田 違います、やらせというか(汗)

 

田崎 前にテレビに出た時も、サマになっていたんですよ。
物思いにふけっているような、哀愁のある感じで。

 

豊田 いや、九鬼の人がおしゃれというものもありますが、とても人の姿を見ていて、髪を切るとすぐに声をかけられるんです。
新しい服を着ているのを見ると、「東京行ったのか?」と言われたり。
ネットで買っているんですけどね(笑)

 

田崎 このままの状態を維持して、若い人に来てもらって、最終的にはこの町に住みたいな、と思われるような町にしたいですね。
そうなったら最高ですね。